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真に暑さに強くなる方法を考える ~栄養面~

いつもホームページをご覧いただき、ありがとうございます!

間もなく「梅雨明け」が発表される頃となりました。

暑熱順化、水分・塩分補給については、ご確認いただけましたでしょうか?

キーワードは熱中症予防なのですが、

世間一般に聞こえてきますのは、

いわゆる“対処療法”やそれに近いもの(*熱中症になる直前の対策)が大半で、

残念ながら『根本解決』には、ほとんど触れられていません。

そのような中、この7月に名古屋で開催されています大相撲で興味深い話を耳にしました。

梅雨明け前の高温多湿の中、行われます大相撲名古屋場所。

当然、力士にとって、

暑さ対策は、必須課題となります。

その中、

幕内最年長力士、現在38歳、豪風関の言葉と行動が印象的でした。

午前の稽古が終わる昼頃、気温の高い時間にも関わらず、

ぬれタオルを頭に巻き、宿舎の周りを1~2時間散歩や自転車で運動。

『暑さと仲良くなる』

という考えのもと、

「暑いからといって、クーラーの部屋にはいない」

を口にしながら、それを具体的に実践されています。

つまり、これが暑熱順化です。

しかしこれも、“強い身体”あってこそです。

ベースである身体が整っていてこそ、暑熱順化も可能になります。

一方、暑熱順化だけを行おうとすると、身体に大きな負担をかけるだけで、

その効果が上がらないばかりか体調を崩すことにもなりかねません。

まずは暑さに強くなる身体づくりから考えなくてはなりません。

【暑さに強くなる身体づくり】

暑さに強い身体を作るのためには、ある飲み物が暑さに強い身体づくりに有効です。

体温が上昇しにくくなるドリンクは・・・

スポーツドリンクでも経口補水液でもありません。

それは・・・

牛乳です。

なぜ牛乳を飲むと良いのか?

その理由は、牛乳に関係する、“ある成分”がカギになります。

その成分とは、アルブミンです。

アルブミン・・・

耳慣れない言葉ですが、

アルブミンとは動物・植物に含まれる可溶性タンパク質から成ります。

では、アルブミンはどのような作用があるのでしょうか?

それを知ることが、熱中症にならない(身体を整える)ためにも重要になります。

【アルブミンとは?】

人間の血液は、血球成分(細胞性成分、血液細胞)と血小板が45%、

これらを浮遊させる血漿成分(液性成分)55%からなります。

その中の“液性成分”である血漿成分は90%が「水」です。

(➠熱中症対策の中で、水分補給が必要となるのは、この「水分」を補うためです)

残りの8%は『タンパク質』です。

さらに残りの2%は、イオウやブドウ糖、ホルモンから成り立ちます。

この8%(血漿タンパク質)の中、アルブミンは60%以上を占めており、

100種類以上あるといわれる血漿タンパクの中で、最も量が多いタンパク質です。

つまり、あまり存在が知られていませんが、

私たちの生体内血液中に、アルブミンはとても多く存在しているものなのです。

アルブミンは、約600個のアミノ酸からできた分子量約66,000の小さなタンパク質です。

では、そのアルブミンがなぜ熱中症対策のカギになるのか・・・

それはアルブミンが、血液中や体内での水分量調整を果たすからです。

アルブミンの働きは、

①水分を保持し、血液を正常に循環させるための浸透圧の維持

②体内のいろいろな物と結合し、これを目的地に運ぶ運搬作用

があります。

つまり・・・

アルブミンには

◎体液の濃度を調整する

◎血管の内側と外側の水分バランスを保つ(血液の浸透圧の維持)

◎血液内の栄養や老廃物や余分な水分などを運搬する

といった“暑さに対する直接的な役割”を担っています。

アルブミンは、成人の場合アミノ酸を原料として肝臓で一日に6g~12g作られ、

血液中に入ります。

またアルブミンは、体重1kgあたり4~5gが体内に貯蔵されています。

体重60kgの成人では、240g~300gのアルブミンが存在することになります。

その約40%が血管内に、残り60%が血管外(細胞や組織間液中)に分布しています。

そして、血管内と血管外のアルブミンは、相互に交換しながらバランスを保っており、

私たちの血漿中のアルブミン濃度は通常約4~5%に保たれています。

14~18日間体内で働いた後、そのアルブミンの多くは筋肉や皮膚において分解されます。

【アルブミンが不足すると?】

血液中のアルブミンの量が減少すると、一体どうなってしまうのでしょうか?

アルブミンは肝臓のみでつくられているため、まず肝臓に何らかの障害があると、

血液中のアルブミン量は著しく低下します。

それ(アルブミン低下)によって、もたらされる弊害としては、

先の説明の通り、血液の浸透圧の維持が乱れることにより、熱中症の原因につながっていきます。

さらに、血管から水分が漏れて外の細胞組織に溜まることで、

全身のむくみや腹水(*腹腔内に異常に多量の液体が貯留した状態やその液体のこと)を

引き起こすことにもなりますので注意が必要です。

また、エネルギーが充分に運搬されなくなり、栄養失調や筋肉障害を引き起こしてしまいます。

そのため、日頃よりアルブミンが低下しないよう心がけておくことが大切です。

【アルブミンを減少させないために】

近年、アルブミンが重要な成分であることが明らになってきたことから、

アルブミンが用いられた健康食品や機能性表示食品も登場しています。

ただ、栄養摂取の重要なポイントの一つとして挙げられるのが、

サプリメント等ではなく、「人間が自然に口にする食べ物や飲み物から摂取を心がける」ことです。

アルブミンは、先に述べましたように、タンパク質をもとに肝臓で生成されています。

そのため、タンパク質を多く含む食品を摂取する必要があるのです。

タンパク質を多く含む食品として、

牛肉・豚肉・鶏肉といった肉類、卵・豆腐・納豆といった大豆タンパク、

牛乳・チーズ・ヨーグルトといった乳製品、さらにはかつおなどの魚類があります。

特に肉類は、タンパク質だけでなく、鉄分や脂肪などの他の栄養素を一緒に摂取することが

可能なため、効率的にアルブミンを生成することができます。

しかし、これらのみを大量に食べたとしても、リンや尿素窒素が高くなることにも注意が必要です。タンパク質、炭水化物、脂肪を「バランス良く摂取する」ことが大事です。

またアルブミンを効率良く生成するためには、ビタミンやミネラルの存在も必須です。

野菜や果物、海藻類なども一緒に摂ると効果が上がります。

アルブミンのみ抽出されたものを摂ろうとするのではなく、

タンパク質量が充分で、且つその他の栄養バランスのとれた食事を心がけ、

体内でアルブミンが合成されるよう促すのが、最も健康的かつ効率的です

【簡単で効果的なアルブミン摂取と熱中症対策】

熱中症対策には、身体から出た(発汗により失われた水分の補給と

体内の水分調節機能が働くことがポイントになります。

そこでこの2つから着目したいのが、『牛乳』の存在です。

まず摂取が簡単であること、そして比較的安価であること、

さらに効果的なところが多々あることが解ります。

独自に調べました数値によりますと、

運動後の飲み物として最適とされるスポーツドリンクと牛乳の成分は、大きな開きがないばかりか、栄養価で牛乳が優っている点が見られます。

▷大手メーカー発表の主力商品の数値[①スポーツドリンク➁牛乳 *それぞれ200ml]

①熱量50kcal タンパク質0g  脂質0g  炭水化物12.4g ナトリウム98mg カリウム40mg  カルシウム 4mg 

➁熱量133kcal タンパク質6.6g 脂質7.6g 炭水化物9.5g  ナトリウム85mg カリウム310mg カルシウム 227mg

【運動後の牛乳摂取の効果】

牛乳のおよそ87%は水分から成っています。

残りの約13%が乳固形分。

牛乳の固形分は、乳脂肪分、タンパク質、炭水化物、ミネラル、ビタミンなどです。

したがって運動後には、汗をかいていますので、その水分を補うことが可能です。

また、ミネラル、ビタミンも補えるため、

スポーツドリンクを摂取した時と変わらない効果が期待できます。

そして、最大の注目箇所は今回の主題でもありますアルブミンです。

乳タンパクを摂取することで、体内でアルブミンが合成されます。

アルブミンには、体液の濃度を調整する働きと血液の浸透圧の維持の働きがありますので、

水を血液中に集め、血液循環が高まり、皮膚に熱を集めて外気に熱を放散させることが促されます。

さらには、運動することにより筋肉内の微細な傷に対して、

タンパク質がその材料となって有効に働き、筋の“超回復”を助けます。

筋肉が少ないほど基礎代謝が低くなるということは、様々な研究から明らかです。

筋肉が増えれば基礎代謝も増えることにもなります。

そもそも基礎代謝が高い人は、消費が活発です。

食べても太りにくく余分なものを排出しやすい身体といえます。

一方、基礎代謝が低い人は、太りやすくやせにくい、体に余分なものをため込みやすい身体です。

体温が低く、冷えやむくみがある、汗をかきにくい、疲れやすいなど、

思い当たる人は基礎代謝が低いばかりか、熱中症になりやすい状況にあるといえます。

つまり、運動不足で太っている人は、筋肉量が少なく、基礎代謝が低下しているのです。

そのような人はもちろん、全ての人にいえるのが、

運動でしっかりと筋肉をつけ、“基礎代謝の高い身体”になる必要があります。

人間の体内では 運動後1時間以内は、成長ホルモンの分泌が盛んになり、

筋肉の合成が活発な時間帯です。

この間に、充分なタンパク質を補給できれば「筋肉の成長」を促すことができます。

ちなみに運動をしないで、牛乳だけを摂取しても効果はありません。

大切なことは“運動後”に「(良質な)タンパク質」を摂ることです。

 

《まとめ》

「あなたは熱中症対策として、何を実践していますか?」

という問いに対して返ってくる答えは・・・

「汗をかくと、身体の水分が失われるので、水分を意識してたくさん飲みます」

「汗には塩分が含まれているので、常に塩分補給しています」

「スポーツドリンク、また経口補水液を飲んでいます」

「塩飴や梅干を食べたり、意識的に味噌汁も塩味を増やしています」

といったものが多いのではないでしょうか。

「夏だから」、「暑いから」、「汗をかいたから」といって、

むやみやたらな水分補給は、

逆に体内のナトリウムバランスを崩す結果にもなりかねません。

(▲低ナトリウム血症)

そして塩分(ナトリウム)補給については、

ある興味深い実験結果があります。

5時間程、むし暑い部屋で普段どおりの生活をした場合、

汗をかいて、出て行く塩分は2g程度だったそうです。

予想以上に塩分は対外へ排出されないものなのです。

汗をかく部分(汗腺)には、 汗をかくときに、塩分を身体から排出しないように、

「出て行こうとする塩分を取り込む働き」もあります。

ですから、じんわり汗をかいている状態ですと、

思っている以上に身体から塩分は体外へ排出されてはいないのです。

日本人の1日の平均塩分摂取量は

「男性11.1g 女性 9.4g」 ※厚生労働省「平成25年国民健康・栄養調査結果の概要」

一方、

生活習慣病予防の“目標量”である「日本人の食事摂取基準 2015年版」においは

『男性で8g未満、女性で7g未満』

となっています・・・。

つまり、

日本人は健康の目標数値よりもオーバーした数値の塩分を摂取している

現実があります。

熱中症予防のために“塩分を摂り過ぎる”と、

かえって高血圧などの生活習慣病の危険性が高まることが考えられます。

そして、体内のナトリウム濃度が高まることにより、さらなる水分が欲しくなります。

つまり、塩分摂取を過剰に意識することは、悪循環になるのです。

ただし、激しい運動などで一瞬にして大量の汗をかいた場合や、

屋外の炎天下の元で一日作業などしていた場合は、

汗と同時に大量の塩分を失うことになります。

2時間程度の強度の高い運動、

例えばサッカーの1ゲームなど、

“激しい身体活動”を行った場合、

体外へ排出される塩分量は、自ずと増加します。

そこで、『大量の汗をかくときは』塩分補給を意識する必要性も出てきますが・・・

ただ、塩分の補給に関しては、急に(塩分を体内に)吸収できるものでもありません。

塩分補給だからといって、試合中に摂取しても間に合わないことにもなります。

全ての面にいえることですが、

大量の発汗の前から(*サッカーの場合、試合開始前から)の確実な対応をしなくてはいけません。

アスリートは、過酷な環境に対応できるように、しっかりとコンディションづくりに励んでいます。

(真夏にも開催されていますJリーグまたJFLで、何人の選手が救急搬送されているでしょうか?)

多くの人がアスリートではありませんが、

プロスポーツ選手から学ばなくてはなりません。

大量の汗をかかない場合においては、

塩分は食事から自然に補い、

水分補給は発汗前から始め、

発汗、発汗後の水分補給(◎目安:体重が減少しない程度)を行うこと

がポイントになります。

そして何より、

確実な栄養補給で、体内でアルブミンが生成を促す意識をしていきたいものです。

さらに、

身体を動かす(筋肉に刺激を与える)ことで筋肉をつけ、

日頃より代謝の良い身体づくりに努めましょう!

あなたの『正しい知識と実行』が、熱中症を防ぎます。

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